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症例紹介

症例紹介

わんちゃんの回虫症(消化管の寄生虫)

わんちゃんの回虫症とは>>>

回虫とは哺乳類の小腸に住み着く寄生虫(消化管内寄生虫)です。その中でもわんちゃんに最も寄生しやすい種類を”犬回虫“と言います。

犬回虫には発育ステージがあり、卵→幼虫→成虫へと成長していきます。成虫の大きさは10~20cmくらいの白く細長い形です。子犬さんの便に混じっている白く細長い物体を発見して、私たちは虫体(成虫)を直接目撃することができます。犬回虫は大人のわんちゃんの体の中では成虫になることができず、筋肉の中に幼虫の状態で留まります。生後5ヶ月齢未満の子犬の体の中でのみ成虫になることができます。そのため、便に成虫が混じるのは子犬さんだけになります。

下に成虫の画像が出てきます。苦手な方はスクロールをお願いします。

感染の経路として以下の方法が知られてます。

⚪︎経口感染虫卵を口にして感染します。

⚪︎胎盤感染:感染してる母犬から胎盤を通して感染します。

⚪︎経乳感染:授乳期の母犬から子犬へ乳汁を介して感染します。

⚪︎待機宿主による感染齧歯類等が虫卵を食べると、幼虫へ成長して組織に留まります。幼虫を保有する動物(これを待機宿主という)を食べたわんちゃんに感染します。

また、犬回虫は、人間への感染も報告されています。犬回虫の虫卵で汚染されている土や砂で遊んだ後に、十分に手洗いを怠ると卵を摂取する可能性があります。犬回虫に感染してるわんちゃんの毛には、虫卵がついている可能性が高いです。寄生虫の薬を飲んだことがないわんちゃんと接触した後には、手洗いを行うようにしましょう。

人に感染した犬回虫は成虫まで成長することはできませんが、内臓や筋肉中に幼虫のまましばらく寄生します。やがて幼虫は死滅しますが、その時に様々な物質が虫体から放出されます。虫体から放出された物質が刺激物質となり炎症が起きます。この病気を幼虫移行症と言います。症状が出るのは、小さなお子様が多いとされています。肝臓や脾臓のトラブル、貧血食欲不振などが見られます。また目の中に幼虫が迷い込んで視力障害を引き起こすことも知られています。

わんちゃんの回虫症の症状は>>>

生後3ヶ月齢以上のわんちゃんが感染しても、ほとんど成虫にまで成長することはありません。したがって、多くの場合、無症状です。

しかし、3ヶ月齢未満のわんちゃんに多数感染すると様々な症状が認められます。

以下によく見られる症状を挙げておきます。

①ご飯を食べてないのに、お腹が膨れる

②時々、下痢をする。

嘔吐が見られる。誤嚥性肺炎の原因にもなる。

発育が遅い

⑤虫体による腸閉塞が起こり腹痛を訴える

⑥震えなどの神経症状

わんちゃんの回虫症の検査は>>>

上に挙げたような症状が見られたら、犬回虫症の感染を疑い糞便の検査を行います。糞便を顕微鏡で観察し、犬回虫の虫卵やその他の感染性病原体を探します。もしくは糞便中や嘔吐物に成虫を直接確認して、診断に結びつくこと多いです。

下に便に混じった成虫の画像が出てきます。苦手な方はスクロールをお願いします。

糞便検査による虫卵の検出率はそこまで高くはないため、糞便検査で寄生虫の存在が確認できなくても、予防的な駆虫薬は必要となります。

わんちゃんの回虫症の治療と予防は>>>

わんちゃんの回虫症の治療は、駆虫薬の投与が必要です。犬糸状虫症(犬フィラリア症)の予防に用いる薬が犬回虫およびその他の消化管内寄生虫にも有効となってます。駆虫薬は飲むタイプのものや、背中に薬液を垂らすスポットタイプのものがあるので、その子に応じた薬を選ぶことができます。犬糸状虫症予防も目的に1年を通して月一回投与されてることも多いです。

犬回虫症は、子犬さんにとっては一般的な病気ですが多くが症状がありません。定期的な糞便検査予防薬を投与することで、大人のわんちゃんの回虫の保有率を下げることができます。また、症状があるわんちゃんも駆虫薬治療をした後の予後は良好なことが多いです。

回虫の思い出>>>

私が初めて回虫を見たのは、大学生の時です。しかも犬回虫ではく “豚回虫” 。

大学生当時、実習の一環で豚のお世話をすることがありました。お世話の内容は、餌の給餌や豚の体温測定、豚舎内の清掃、そして排泄物(糞便)の処理等です。排泄物の掃除は、豚の糞便をスコップで集めて一カ所に集めないといけません。ある日、いつものように糞便をスコップですくっていたら、一つの糞便の周囲にまとわり付くように枯れ草が絡みついてました(豚の一つ一つの糞便は、人の握り拳2個分くらいの大きさがあります!)。しかし、、、その”枯れ草”には張り?があり、巨大なミミズのような形をしていました。その正体は”豚回虫”でした。驚きと感動が入り混じったような気持ちで豚回虫として認識したことを覚えてます。豚回虫は手の平以上の大きさを持ち、すごくツヤがあって不自然なくらい白く、迫力がありました。その後、その豚さんは駆虫薬を投与して無事に治りました(大学で研究用に飼育しているので出荷はされません)。

今となっては寄生虫に日常的に遭遇するので、寄生虫を目の当たりにしても当時のような驚きはありません。しかし、多くの一般の方は寄生虫など見たこともない方がほとんどだと思います。もしおうちのわんちゃんのうんちから寄生虫が出たら、慌てずに動物病院へ向かってください。